心理的安全性をつくる動きは地域でも進められています。ここでは、会社などで広がりを見せる心理的安全性の構築を地域の取り組みからご紹介してまいります。
心理的安全性とは?
心理的安全性は、個人が自分の意見や質問、懸念、または失敗をオープンに共有できる環境やチーム内の感覚を指します。この概念は、チームメンバーがリスクを取ること、イノベーションを促進すること、お互いに正直でオープンであることを恐れない文化を作り出すことに焦点を当てています。心理的安全性が高い場では、人々は失敗を責められることなく、学習と成長の機会として失敗を共有できるため、より創造的で生産的になります。エイミー・エドモンドソン教授によって広く普及したこの概念は、効果的なチームワークと組織内のポジティブな成果に不可欠であるとされています。
心理的安全性は、チームのパフォーマンスや創造性、継続的な改善に直接的な影響を与えるとされています。チームメンバーが自分たちの考えや提案を安心して共有できる場合、問題の早期発見や解決、イノベーションの促進につながります。また、心理的安全性はチームの結束力や満足度を高め、組織全体の効率と効果を向上させることができます。
心理的安全性の構築には、リーダーシップの役割が非常に重要です。リーダーは、オープンなコミュニケーションを奨励し、失敗を学習の機会として扱い、チームメンバー間の尊重と信頼を育むことによって、心理的安全性の高い環境を作り出す責任があります。
心理的安全性を求める避難所【東京都港区の例】
東京都港区は麻布地区、芝地区、赤坂地区、高輪地区、芝浦港南地区の5つで構成され、近隣の防災住民組織(町会、自治会)、事業所、学校PTAなどで結成された、地域防災の中心を担うための組織である「地域防災協議会」により運営されます。
どんな社会的問題を解決するか、どのような変化をもたらしたいのか?
長期的なビジョンと短期的な目標はなにか?
高輪地区では、港区が策定した避難所運営マニュアルに従って、地域住民が避難所の開設作業を行うことになっています。しかし、高齢者が多い町内会では、このマニュアルを基にして避難者を安全に受け入れる体制を構築することが困難で、多くの悩みが生じていました。
参考資料:港区地域防災計画https://www.city.minato.tokyo.jp/chiikikeikakutan/chibouh24.html)
高輪地区では、高齢者が多い町内会において、迅速に避難所を立ち上げ、避難者を安全に受け入れるための環境整備に向けた計画策定を開始しました。
町内会のメンバーであればだれもがかかわることができるものにしたい
地域のひとでも有事の際、迅速に安心安全な空間を作り、災害関連死を出さない。
町内会役員が率先して、安心安全な空間づくりの体制を構築する。
コミュニティーのニーズ
対象となるコミュニティのニーズを深く理解します。
ほかにはどのようなサービスがあるのかを把握します。
港区内の22地域防災協議会の一つである高輪地区の白金小地域防災会は、13の町内会や自治会から成り立ちます。各地域の代表が集まるニーズ会議を実施した結果、白金小学校を地域住民の避難所での対応から始めることで決定しました。
日本全国には、さまざまな避難所運営マニュアルが存在し、その内容は100ページに及ぶものから、見開き4ページ程度のものまで多岐にわたります。また、避難所の開設や運営に必要な備品を集めたキットも、防災専門業者や大学機関によって開発されています。しかし、『高齢者や避難所運営の経験がない素人でも避難所を立ち上げることができる』という課題に対しては、マニュアル内容をアクションカードに変換するなどの方法で対応しているものの、現状では十分な考察が行われていないのが実情です。
持続可能な運営モデルの構築
社会的な目標を達成しつつ運用的に自立可能なモデルを考えます。
運用コスト、持続可能な演習や訓練などを詳細に計画します。
グローバルリンクは、地域の課題を踏まえた自立可能なモデルとして、「避難所開設キット」の構築を選択しました。これは単にキットを作成し導入するだけのコンサルティング的アプローチに留まらず、町内会役員と共に一字一句の手順を綿密に考察し、アクションカードとして完成させました。さらに、アクションに必要な備品や帳票など、現場ですぐに使用できるものを事前にキットに収め、パッケージ化することで、実用性を高めています。
避難所開設キットは、パッケージ化されているものの、実際には担当者や地域の住民の声を反映しながらその構築が進められます。その結果、完成したキットは、ある意味で地域の人々自身によって作り上げられたものと言えます。このプロセスは、持続的な改善への意欲を育む雰囲気を地域に醸成する効果もあります。